『ネットワークとアジア国際協力の研究』
本研究のキーワード
東アジアの地域研究と政策支援
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■ 研究内容の概要: 本研究はグローバル・ガバナンスの視点から、中国を中心とした東アジア地域と日本との協力関係の確立と発展を目指して、次世代サイバースペースのインフラを活用した新しいコミュニケーション・ネットワークの基盤整備を試みるものである。具体的には、つぎの3分野においてコミュニケーション・ネットワークの基盤整備を進めている。
■ 研究内容の詳細: 1. 東アジア地域研究サイト SFCにおける東アジア地域研究の研究成果と講義内容を中心に、幅広く恒常的に利用可能とすることを目指し、それらのアーカイブ化を進めている。教員、大学院生の研究成果や公開論文のみならず、SFCにおける関連講義のWEB化を進め、教材コンテンツの一部を英語化、中国語化することによって、SFCを主体とした教育・研究のネットワーク化を推進している。また、SFCと東アジア地域の研究・教育機関との学術交流を進めており(上海・復旦大学や台湾・国立政治大学との合同ゼミ)、研究・教育成果の相互配信を通じて、東アジアとのネットワーク形成も進展している。こうしたネットワーク化は、効率的な検索エンジン、ストリーミング配信環境の実装を通じて、学生による効率的な「繰り返し学習」を可能にしている。さらに、日中関係におけるトラック2(「日中友好21世紀委員会」)の役割研究と関係文書のデータベース化とそのWeb上での公開に向け、中国側との協力のもとに進めている。これは、たんにデータベース化にとどまらず、日本外交、日中関係において果たしてきた役割について多層的に研究を進めており、その成果も公開される予定である。 2.東アジア地域における研究と教育交流に向けたネットワーク整備と実践 中国に焦点を絞った東アジア地域研究に関連するサイトは、欧米ではかなり充実している。台湾やシンガポール、さらに香港や大陸中国からも中国語のサイトがみられるようになっている。ところが、残念ながら日本においては官庁、大学や研究機関についても、研究者や学生が簡単に利用できる東アジア地域研究のサイトをほとんど提供していない。「ハイテクリサーチセンター」の先端的情報インフラを利用して、研究者や学生が有効に利用できる「SFC東アジア地域研究」サイトの立ち上げを目指している。本サイトの特色は、一つに東アジア地域研究者・学習者による利用を目的とするコンテンツであるが、いま一つの特色はSFCの学部生や大学院生に向けた教育コンテンツの充実と「グローバルがバナンス」の国際的展開のためのネットワークの機能面におけるサポートもめざしていることである。 たとえば、2000年度から大学の夏季休暇期間を利用して、上海で復旦大学および台湾国立政治大学の学生との研究討論会を行っている。これらの討論会の模様は、本サイトの「研究会ビデオ」のWEBページで公開している。また、2001年10月、中国中央党校の訪日団がSFCを訪問した際に合わせて、上海、復旦大学とSFCとを結んでインターネットビデオ会議(IVC)を開催した2002年度秋学期から大学院レベルで上海・復旦大学、韓国・延世大学との遠隔授業を実施しており、今後は学部、大学院、教員による総合的な学術交流を目指した、ネットワーク整備が進められる。 ホームページ上には本研究会における卒業論文を整理し、掲載するデータベースを作成しており、タイトル、サブタイトル、著者による検索が可能になっている。(仕様:Apache1.3.22 (Web Server)、PHP4.0.4 (Database Access Language)、PostgreSQL7.1.3 (Database Server)。本研究会における修士論文については、掲載するデータベースの作成しており、ホームページ上での公開を予定している。卒業論文と異なり、全文検索システムを導入する予定である。全文検索システムにより、タイトル、著者、本文の内容で検索することが可能である。 さらに、学習院大学教授で日中関係の安定的発展に長く貢献した故香山健一氏が残された日中国交正常化過程に関する資料をデータベース化するプロジェクトを進めており、ホームページ上で利用可能な全文検索システムの構築・公開予定。データは書籍、論文、報告資料、FAX、写真、手書きのメモなど多岐にわたり、データ件数は1600件程度である。現在データベースの設計、データ作成段階にある。 3.中国の環境問題の解決に向けた研究と実践 中国、とくに瀋陽と成都に焦点をしぼって、環境問題の解決に向けた研究と実践を日中共同で進めている。 中国の遼寧省瀋陽市が管轄する康平県は内蒙古自治区の南縁部分と接し、砂丘地帯が広がっている。「風道」と呼ばれる強烈な風の通路がこの地帯に多く分布しており、「風道」は内家古に広がる砂漠から多量の砂を移動させ、康平県を砂漠化しつつある。 運び込まれる大量の砂は_地だけでなく、人家、鉄道、道路に多大の被害を毎年もたらしており、東北地方の主要な自然災害の一つに数えられてきた。しかしながら、これまでほとんど防風・防砂に対する効果的な対策は実施されていなかった。本県は中央政府が指定する「貧困」県の一つであり、瀋陽市の市長の「責任制」によって植林事業がはじまった。小島が代表を担当する慶應義塾大学地域研究センターの「中国環境研究会」は1995年以来、同市環境保護局との環境問題の共同調査・研究・環境改善の具体的活動面における協力の実績を背景に、同市長の「育林責任」プロジェクトに協力することになった。本事業の自的は「風道」に当たる部分に防風・防砂林を構築し、あわせてその背後部に経済効果の高い樹種、たとえば果樹や生薬林を植林し、それを生産加工して販売し、この地域特有の貧農地帯の経済活性化を促そうとするものである。 遼寧省康平県においては、かつて弱アルカリ性土壌である上記砂丘地帯に分布する土壌を対象にした植林事業が実施されたことがある。幼木の根の活着率(移植した苗の根が根付き、地上部の葉に新葉が発生する割合)が30%程度と低いことを改善するために、リン酸石膏を施用して60%にまで活着率を上げることを試みた。活着率をあげる実験ははほぼ成功したが、問題はリン酸石膏に不純物として含まれるフッ索化合物による樹木体内への浸透がみられたことである。この問題の解決にとって、バイオブリケット法(農産物の残査を石炭および石灰とともに燃焼させ、石炭中の硫黄分を石膏として脱硫する方法)による灰の利用は有効である。石膏が数%〜10数%含まれていること、かつバイオブリケット灰にはフツ来化合物が含有されていないことが明らかになっており、果樹へのフツ素汚染を起こさず、安全に果実生産および生薬生産が期待されるからである。 バイオブリケット炭を用いて、防風林・防砂林、果樹および生恭の樹木に対する活着率の向上を検討する.同時に、樹木の生育量ならびに果樹ならびに生薬にあってはその収穫量を調査する。また、「風道」のもっとも厳しい箇所では、最初から植林は不可能であることも考えられるので、飛砂(砂が風によって移動すること)を抑えることがまず肝要で、そのための雑草による地表面定着を試みる。この雑草の定着にもバイオブリケット灰を用いて検討する。バイオブリケット灰の製造、あるいはその購入費用を経済林の育成によりどの程度吸収できるか経済的な側面からの検討も行う。2002年度からは日本国瀋陽駐在総領事館の「草の根無償」(1000万円)の助成を受けている。2003年度からは慶應義塾大学大型研究助成を受けた「中国環境研究」プログラムの中で、瀋陽市と協力して小規模CDMのモデル作成を進めている。 バイオブリケットを民生用に普及して、大気汚染や酸性雨の原因物質となっている亜硫酸ガスの石炭からの排出量を1/4から1/5まで減少させた。その結果生ずるバイオブリケット灰を飛砂による災害で悩む地帯の土壌改良資材として適用し、防風杯・防砂林を構築する。そして、飛砂災害や砂漠化を防ぐに止まらず、この防風林・防砂林の背後に果樹杯、生薬林を育成し、地域の経済的活性化を積極的に促進することに大きな期待が寄せられている。 1999年から進めてきた植林が吸収する CO2 を日本企業に売却して得た収益を植林に再還元するCDMのスキーム作成は、シンクの小規模CDMとしては日本で最初の試みであり、また中国での植林CDMとしては最初の実験であり、その成果が期待される。 また、瀋陽市を対象にした、パンダ研究基地との協力も進められている。 ■ プロジェクト1(次世代サイバースペースインフラとガバナンスの研究グループ)における本研究の位置付け 次世代ネットワークの実証実験 ■ 研究の発展方向 本研究のゴールは、研究、教育環境のネットワーク環境の整備、そして東アジアとの具体的な協力とその成果のWEB化を通じて、サイバースペース上での東アジアの地域研究と地域協力の実践に不可欠の新しいコミュニケーション・ネットワークを実現することである。そうすることで、従来の国民国家をベースにしながらも、国境を超えた諸アクター間の協同による問題解決の効率化を可能にするガバナンス実現に向けた地域間協力が発展することが期待できる。 ■ 関連URL 東アジア地域研究プロジェクト 小島朋之研究室 http://jun-gw.sfc.keio.ac.jp/JP/index.html ■ 関連資料および資料 共同実施/クリーン開発メカニズム事業承認申請書(ダウンロード kojima.ZIP 78K) |