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プロジェクト1

『次世代サイバースペースと地域開発』


キー本研究のキーワード
【Multimedia Database】【Local Initiative】【Aging Communities】【Public Health】【Indigenous Knowledge】【Fieldwork】【Network Community】

インタビュービデオはこちらからご覧いただけます。

■ 研究者

梅垣理郎 総合政策学部教授兼政策・メディア研究科委員
ティースマイヤ・リン 環境情報学部助教授



■ 研究内容の概要:

高速通信ネットワーク、汎用型マルチメディア技法など先端的ITの導入によって政策分析に質量とも新しい可能性が生れている。この新しい可能性は、特に、貧困の深刻化、環境問題、公衆衛生環境の劣化などを抱える開発をめぐる政策分野において注目される。先端的ITの導入は、開発に伴う政策課題のミクロなレベルでの観察を促進し、その記録媒体として画像・映像の活用を可能にし、同時・多地点的な観察と記録収集、記録の貯蔵と共有の持続的維持を可能にするからである。

こうしたメリットは、開発政策を従来の中央政府・公文書・開発テクノクラートから解放し、課題を抱える地域そのものでの対応(開発の地域主導と地域資源の運用)そして、そうした地域間に形成されるネットワークの機能への注目を可能にする。

本研究はこのような理解を背景に発展段階の異なる日本、韓国、タイ、ベトナム内の地域を対象に、地域開発の新しいアプローチを検討している。



■ 研究内容の詳細:

本研究は複数の調査・実践を同時に進めており、その成果も上記地域に散在する研究提携組織の自律性を前提に、いわば分散型環境の許で蓄積・公開をすすめている。

本研究の目的は開発政策を中央政府・公文書・開発テクノクラートの独占から開放し、開発が抱える様々な政策課題をより競合的な文脈で検討する基盤を構築することである。競合的とは、なによりもまず、1)政策課題を抱える「現場」での「現場」における人間による課題の性格づけ評価を含む政策検討の文脈を意味する。また、2)課題評価にあたり、統計資料などと平行して画像・映像などに刻み込まれたいわば「意図せざる」記録の正当性を十分の取り入れた政策検討の姿勢を意味する。

スライド1

東アジア戦後史の再構築--未公開フィルムを中心に、冷戦という大きなストーリーでは捉えられない、東アジアの戦後展開の再構築。未公開フィルムのデジタル化と新規映像開発。


最後に、3)政策課題を抱える地域を、経済成長という戦後史の性格づけを独占する大きなストーリーから解放し、その地域独自の記憶に基づくその地域の流れを政策検討の背景に導入することを意味する。

このような研究を促進してゆく上で不可欠の方法とは、いわゆる参加型観察をさらに進めた地域生活との一体化を前提とする地域の理解であろう。従って、この研究では、研究者は観察・分析者であると同時に実践者であることが望まれる。いい換えるならば、地域の記憶の共有である。フィールドワークが特に重要であると同時に、テキストメディアではキャプチャーできない地域の記憶をマルチメディア技法の動員に依存する所以である。また、現場での協力体制が特に不可欠であるが、そのために、この研究の開始に先立って、ネットワークキャンパス構想の許で、タイ、ベトナム、韓国などに20近くの研究機関、NGOsなどの調査・実践のネットワークを構築した。

本研究が特に重要だと考える開発をめぐる政策課題には以下のものが含まれる。1)HIV問題などパブリックヘルス環境の課題と地域的対策;2)森林・河川資源の保全に見る地域おこしと地域主導;3)地域と人間の「老い」と開発のコスト;4)農村秩序の変容と移動労働者など。いずれも、経済発展段階の異なる社会を縦断する形で現れ、しかも大規模な予算措置を必要とする政策課題であるが、本研究は、こうした課題をめぐる地域による政策策定イニシアティヴを追っているのである。先に述べた地域独自の記憶に基づく地域の流れの再構築(歴史の復権)は、以上のような個別政策課題の追求と平行して進めている。

スライド2


スライド3 タイ北部農村ニーズ調査。タイ・チェンマイ県メー・リム区のモング族村にて。通信インフラ、保健問題、ジェンダー問題など様々な角度からニーズ調査を行った。その他 ラフー族、カレン族村の調査も行っている。
詳細は、
http://web.sfc.keio.ac.jp/~thiesmey/widenglish.html


これまでの研究成果は、国連開発プログラムでの調査報告、APECあるいはW3C等国際フォーラムなどでの報告に加え、当事者の人権が保護される範囲で、ネットワーク上での公開を進めている。また、2002年度からは経済産業省主導のAEN--アジア e-ラーニング構想--などいわゆるE-ラーニングをプラットフォームに、研究成果の一部を公開する機会を求めている。



■ プロジェクト1(次世代サイバースペースインフラとガバナンスの研究グループ)における本研究の位置付け

梅垣が主幹となってすすめるテーマは上記の中でも地域と人間の老い、そして地域の記憶に基づく地域史の再構築である。また、ティースマイヤは地域のイニシアティヴ、地域固有の政策資源を視点に、HIVなどパブリックヘルス問題、森林・河川資源の保全の調査を進めている。それぞれ、近代化論あるいはジェンダー論を規範的な理論的拠り所としているが、現在、ヒューマンセキュリティ論としての統合の可能性を検討している。



■ 研究の発展方向

先にも記したように、開発という課題を課題の現場に戻す、というのが本研究の大きな目標である。また、本研究においては観察・分析は実践から切り離しては成立しえない。
今後、本研究は、まず「政策課題」の共有をメディアとする地域間ネットワークの構築を目指し、併せて、そのネットワークをインフラとして開発のローカルなイニシアティヴに関するマルチメディアデータベースを構築する。



■ 関連URL

JANP
http://www.janp.sfc.keio.ac.jp/

http://web.sfc.keio.ac.jp/~thiesmey/widenglish.html

http://aen.janp.sfc.keio.ac.jp/

http://www.janp.sfc.keio.ac.jp/nci/index.html