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プロジェクト2

『サイバーアースの構築とその応用』


キー本研究のキーワード
【GIS】【デジタルアース】【時空間情報】【空間IT】【シミュレーション】【環境評価】

インタビュービデオはこちらからご覧いただけます。

■ 研究者

福井弘道 総合政策学部教授
厳 網林 環境情報学部助教授
吉田浩之 総合政策学部講師
臼田裕一郎 政策メディア研究科助手
坂本 愛 政策メディア研究科助手
渡部展也 政策メディア研究科助手
坂上寛之 SFC研究所所員
竹島喜芳 SFC研究所所員
佐藤 修 SFC研究所所員



■ 研究内容の概要:

  情報社会では、ネットワークで結ばれたコンピュータのデジタル情報から構成されるサイバースペースにおける意志決定が、現実の世界を牽引していくところに特徴がある。従って、可能な限り現実の実世界を忠実に仮想空間上に表現することが重要である。
  本研究はアースメタファをサイバースペース上で実現し、地球に関する多様で大量の自然・文化、社会経済等に関する情報を取得・表現・解析することが可能な仮想地球(デジタルアース)の構築とその応用基盤を開発することを目的とする。具体的には、1)高解像度衛星画像等リモートセンシングデータからの地物抽出および時空間情報の多次元同化技術、2)データの相互運用やWEB-GIS等の技術開発、および3)リアルタイムなリスクマネジメントや環境評価シミュレーション等への応用技術等を研究する。



■ 研究内容の詳細:

  情報化社会の本質は、サイバースペース(実空間と区別されたコンピュータのネットワークが生み出す仮想空間、デジタルワールド)における意志決定が、リアルワールド(実際の実物世界、経済・生活・産業・環境)に先導的な役割を果たすことにある。 従って、実物世界のメタファーとして、いかに情報が欠落することなくサイバースペースを構築するかとそれをどのように利用するかが重要な課題となってきた。それには従来のような「デスクトップメタファー(机上隠喩)」として、数字やテキストの処理をしてきた一般的なツールではなく、膨大な地理空間情報を取り扱い、多解像度で、3次元や時系列の地球を実時間で表現することが可能なツール「アースメタファ」が求められている。
 サイバースペースを、デジタル化された地理空間情報に基づいて構築することによって、実空間から仮想空間への正確な写像が可能になり、様々な自然現象や社会経済活動などを仮想空間上に可視化できる。また同時に、この仮想空間を共有している人間に、コミュニケーションをしたり、相互理解・協調作業の場を提供することになる。このような地理空間情報を、多解像度や多次元で高度に活用することによって、再構築されるサイバースペースのことをここでは、「デジタルアース」と呼んでいる。

  さて、デジタルアースの構築のためには、地理的位置や地域の空間の範囲を明示した自然、社会、経済等の属性データを、組織的に取得、処理、管理、分析、表示して総合的に取り扱う、「地理情報科学」が中心的な役割を果たす。 GIS(GISys; Geographic Information System)やRS(Remote Sensing)を積極的に活用し、多次元で分かりやすく地表を可視化するとともに、地表の変動現象の解明、すなわち地表の形成にはどのような規則性があるのかといったプロセスモデル分析(GISci;Geographic Information Science)を行い、さらに進んでシミュレーションにもとづく将来予測を行って、行動規範や政策を立案し、それらの情報を流通・広報する(GIServ; Geographic Information Service)領域はジオインフォマティクス(Geoinformatics)と呼ばれる。(図1、2参照)。筆者の所属する慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科では、2001年春からジオインフォマティクス・プログラムをスタートさせ、空間情報の表現、分析はもちろん、モデリング手法、シミュレーション、合意形成、計画技術などの修得を通じて、政策形成ができるエキスパートの育成を目指して活動してきた。

 本研究は、特に地球環境システムのマネージメントにおける意思決定支援を目的に、「地球環境」という空間に焦点を当て、デジタルアースの構築と応用を検討している。これまで、デジタルアースの構築技術に関する研究として、高解像度衛星画像等からのデータ抽出や、データの相互運用、WEB-GIS等の技術開発等の研究をすすめ、そのプロトタイプをわが国で始めて実現した。さらに構築した「サイバーアース」の応用に関する研究として、リアルタイムなリスクマネジメントや環境評価シミュレーション、地球温暖化問題における森林機能の評価等の応用研究を行っている。(図3,4参照)

図1、ジオインフォマティクスの3層 図1、ジオインフォマティクスの3層


図2、デジタルアースの構成要素 図2、デジタルアースの構成要素


図3 デジタルアースのリスクコミュニケーションへの応用 図3 デジタルアースのリスクコミュニケーションへの応用


図4 デジタルアースブラウザー例 図4 デジタルアースブラウザー例
図4 デジタルアースブラウザー例(その2)




■ プロジェクト2(次世代サイバーノレッジの研究)における本研究の位置付け:

本研究では、次世代サイバースペースにおける実空間ノレッジの基礎技術として、実際の地球空間をサイバースペースに構築するための技術とその応用について取り組んでいる。



■ 研究の発展方向

  デジタルアースの実現により、グローバルからローカルまでの多様な情報をシームレスに視覚化し、地球規模の問題の全体像を分かりやすく提示することが可能になり、多くの人の共感に基づく「地球市民としての身体の知」の形成が促進されることが期待される。デジタルアースは、単にデータや情報をブラウズするだけでなく、モデル分析をした結果を投げかけ、コミュニケーションすることに大きな可能性を秘めている。このデジタルアースのもつ、地球は一つ、人類は一つといった「連関・連携関係」を、体感させるといったメディアとしてのポテンシャルはとても大きいと考えられる。このような世界の実現によって、「地球市民」や「地球社会」といった概念は、より具現化していくものと期待される。



■ 関連URL

福井研究室
http://g-web.sfc.keio.ac.jp/