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プロジェクト2

『アクティブ・マルチデータベースシステムの実現方式に関する研究』


キー本研究のキーワード
【データベース】【知識ベース】【メタデータベース】 【時空間データベース】【マルチメディアデータベース】

インタビュービデオはこちらからご覧いただけます。

■ 研究者

清木康 環境情報学部教授兼政策・メディア研究科委員



■ 研究内容の概要:

本研究では,データベース検索者(データベース利用者)の時空間状況に関するデータの動的取得,および,解釈によって,検索者の時空間的状況に関連したデータベース検索・統合操作群を自動的,および,連鎖的に実行するアクティブ・マルチデータベースシステムの実現に関する基礎的研究を行った。モバイルコンピューティング,および,アクティブデータベース機能をマルチデータベースシステムに組み込む方式を示し,実際に実験システム上でのデータベース処理実験を行い,その実現可能性,有効性を検証した。

本研究の特徴は,モバイルコンピューティング環境において,検索者の時空間状況に関するデータの動的取得,および,解釈によって,検索者の時空間的状況に関連した異種データベース間検索・統合操作群を自動的,および,連鎖的に実行するアクティブマルチデータベース環境を実現する点にある。

また,本研究では,新しいインターネットメディア(ブロードバンド,デジタル放送,モバイル機器によるインターネット上データベースアクセス)によるデータ配信を実現するマルチデータベースシステムの基本的な実験を行い,その実現可能性を検証した。



■ 研究内容の詳細:

現在,GPS,GIS,携帯情報端末などのモバイル計算機技術の発達により,データベース検索者の時間的,空間的状況の認識を伴って,検索者がその時点で最も必要とする情報を提供するシステムの実現可能が高まっている。これらの技術とデータベースシステム技術を組み合わせることによって,データベース検索者の時空間的状況に応じたデータ検索・統合を実現するための基盤を構築することが可能となる。

本研究では,検索者の時空間的状況において,最も必要とされるデータを検索・統合するために,(1)検索者毎の時空間的状況の自動認識機能群,および,(2)その状況に適合したデータ群をマルチデータベース群を対象として検索・統合するための機能群,(3)抽出されたデータを検索者の移動体端末に送信機能群を有するマルチデータベースシステムの基礎的研究を行った。

データベース群を統合的に操作可能とするシステムは,マルチデータベースシステムと総称される。広域ネットワークに連結された独立なデータベース群を対象とした検索・統合機構の実現によって,それらのデータベース群の利用価値は飛躍的に増大する。データベース群から抽出されるデータの価値は,データベース検索者の時間的,空間的状況に応じて動的に変化することを仮定すると,モバイルコンピューティング技術をマルチデータベースシステムに適用することにより,状況に応じて価値の高いデータ群をデータベース検索者へ供給することが可能となるものと考えられる。 現在,時空間的変化を扱う時空間データベースの研究が活発に行われているが,それらは,検索・統合対象となるデータ間の時空間的関連性の操作に主眼が置かれている。

本研究は,マルチデータベースシステム環境において検索者の時空間的状況において最適なデータ群の検索・統合機構を実現する方式を目指す点が特徴であり,この研究分野における新しい方向性を示す研究として位置付けられる。

本研究では,異種データベース間データ検索・統合操作を検索者の時空間的状況に連動して実行するために,我々がすでに提案しているメタデータベースシステムを,モバイル計算機技術,および,マルチデータベースシステム技術によって拡張したマルチデータベースシステムの基礎的研究を行った。

ここで,メタデータベースシステムとは,既存のデータベースシステム群およびデータベース群を一段上位レベルのメタレベルシステムによって連結し,異種データベース間の検索・統合を実現するシステムである。

メタデータベースシステムは,それに連結された異種データベース群を対象とした時間的,空間的,意味的な検索,統合機能群をメタデータベース基本演算(プリミティブ・オペレータ)セットとして実現し,それらの基本演算を組み合わせて適用することにより,異種データベース間での時間的,空間的,意味的なデータ検索,統合を可能にする。

本研究では,具体的に,下記の項目の実験を行い,その評価を伴って本アクティブマルチデータベースシステムの実現可能性,有効性を確認した。
  • メタデータベースシステムへのモバイルコンピューティング環境の適用により,検索者の時空間的状況に関するデータの取得,解釈を伴った異種データベース間データ検索・統合処理を自動的に実行する実験システムの実現を行い,実際のデータベース検索実験を行うことによって,検索・統合機能群の実現可能性を確認した。
  • データベース検索者の時間的,空間的状況を認識するための機能,および,抽出されたデータを検索者の移動体端末へ転送する機能を有する実験システムの実現を行い,それらの機能群の実現可能性を検証した。



■ プロジェクト2(次世代サイバーノレッジの研究)における本研究の位置付け:

2001〜2002年度におけるHRC次世代サイバーノレッジプロジェクトでは、サイバースペース上における知識編集・統合技術、マルチメディア・コンテンツによる知識表現技術、および、様々な学問領域におけるサイバーノレッジ実現のための方式設計、システム設計・構築、およびコンテンツ設計・実現を推進した。知的データ資源の活用を図る次世代サイバーノレッジスペースの実現、その中で様々な具体的な応用システムの設計・構築、および、その有効性の検証に関する研究を推進した。

次世代サイバーノレッジプロジェクトにおけるアクティブ・マルチデータベースシステムの実現方式に関する研究は、学問領域や研究者、方法論の間の壁を取り除き、それぞれが有する知識の融合化、統合化、集約化を実現するための基幹的システムとして位置づけられ、今後、このシステム上での多様な応用分野の実現を可能にするものである。



■ 研究の発展方向

モバイル計算機器による検索者の時空間状況に関するデータの動的取得,および,解釈によって,検索者の時空間的状況に関連した異種データベース間検索・統合操作群を自動的,および,連鎖的に実行するために,メタレベルシステムの問合せ処理系にアクティブ・データベースシステム機構を組み込むための基本システムの実現, および, そのシステムの応用環境に関する研究を行う。そして、アクティブデータベースシステムを対象とした本格的な応用分野の実現を目指す。



■ 関連URL

Kiyoki Lab - Multi Database and multiMedia Database Research Group
http://www.mdbl.sfc.keio.ac.jp



■ 参考文献:

[1] Y. Kiyoki, and S. Ishihara, "A Semantic Search Space Integration Method for Meta-level Knowledge Acquisition from Heterogeneous Databases," Information Modelling and Knowledge Bases (IOS Press), Vol. 14 (to be published), March 2003.

[2] D. Sakai, Y. Kiyoki, N. Yoshida, T. Kitagawa: ``A Semantic Information Filtering and Clustering Method for Document Data with a Context Recognition Mechanism,'' Information Modeling and Knowledge Bases (IOS Press), Vol. 13, May 2002.

[3] H. Sasaki, Y. Kiyoki, "Patenting the Processes for Content-based Retrieval in Digital Libraries", Lecture Notes in Computer Science (Springer-Verlag), No. 2555, Proceeding of the 3rd International Conference on Asian Digital Libraries, pp. 471-482, December, 2002.

[4] H. Sasaki, Y. Kiyoki, "Patenting Advanced Search Engines of Multimedia Databases", Proceeding of the 3rd International Conference on Law and Technology (LawTech2002), pp. 34-39, Nov. 2002.

[5] 細川宜秀, 清木康: 文脈認識をともなった時空間的関連性評価方式,情報処理学会論文誌:データベース, Vol.43, No.SIG 5(TOD14), pp.118--133, July 2002.

[6] 石原冴子, 清木康: ``異分野データベース群を対象とした意味的検索空間統合方式とその実現,'' 情報処理学会論文誌:データベース, Vol. 43, No. SIG 5(TOD14), pp.37-53, July 2002.

[7] 鷹野孝典, 清木康: "異分野データベース群を対象とした意味的検索空間統合プロセスの実現", DBSJ Letters, Vol.1, No.1, pp. 55--58, Oct. 2002.

[8] 鷹野孝典, 清木康: "異分野データベース群を対象とした意味的検索空間統合プロセスの実現", 情報処理学会研究報告 2002-DBS-128, Vol.2002, No.67, pp. 47--52, July 2002.

[9] 鷹野孝典, 清木康: "異分野データベース群の意味的検索空間生成・統合プロセスの実現", データベースとWeb情報システムに関するシンポジウム論文集 (Proceedings of DBWeb2002), Vol.2002, No.19, pp. 383--390, Dec. 2002.

[10] 高橋雄介,清木康,"教育カリキュラムと職業データの連携による目的指向型学習支援データベースの構成方式," 情報処理学会研究報告, Vol.2002, No.41, pp.81-88, May 2002.

[11] 高橋雄介,清木康,"教育カリキュラムと職業データベース連携による目的指向型学習支援データベースの実現", 電子情報通信学会技術研究報告, Vol.102 No.208, pp.121-126, July 2002.