『コンピュータ・ネットワーク上の意思決定』
本研究のキーワード
【電子メール・コミュニケーション】【意思決定】【交渉】【倫理】【信頼形成】【合意形成】
■ 研究者
■ 研究内容の概要: コンピュータ・ネットワーク上の意思決定行動に関する分析は、エレクトロニック・コマースやサイバーデモクラシー等アプリケーションの基本的構成要素であり、コンピュータ・ネットワークと社会との関係を考える際の基礎となるべき必須のものである。 本研究では、コンピュータ・ネットワーク上の意思決定行動に関する知見を深めること目的として、意思決定に関する実験を行い、さらに意思決定に関する自己診断を行えるよう、WEB上にサイトを構築する。 電子メールを用いたコミュニケーションやグループワークに関する研究は比較的多いが、TV会議システムを用いた場合の意思決定の質の変化については、ほとんど研究がなされていない。また、コンピュータ・ネットワークを介した交渉行動に関しては、研究自体が世界的に見ても極めて少ない。その意味で新規性については言うまでもない。 ■ 研究内容の詳細: [研究目的] コンピュータ・ネットワーク上の意思決定行動に関する分析は、エレクトロニック・コマースやサイバーデモクラシー等アプリケーションの基本的構成要素であり、コンピュータ・ネットワークと社会との関係を考える際の基礎となるべき必須のものである。 [研究の新規性] 個人やグループの意思決定に関しては、過去約百年間に数万におよぶ実証研究が存在する。しかし、これらの研究の被験者は、大学生や大学院生であり、一般人口ではない。また、コンピュータ・ネットワークが日常生活に入り込む以前のものが大半であるため、今後急速に拡大すると思われるエレクトロニック・コマースや、徐々に普及するとみられる電子投票、ディスタント・ラーニング、遠隔医療に関する集団的意思決定などに対しては、推測の出発点としての意味しか持たない。電子メールを用いたコミュニケーションやグループワークに関する研究は比較的多いが、TV会議システムを用いた場合の意思決定の質の変化については、ほとんど研究がなされていない。また、コンピュータ・ネットワークを介した交渉行動に関しては、研究自体が世界的に見ても極めて少ない。 本研究では、コンピュータ・ネットワーク上の意思決定行動に関する知見を深めること目的として、意思決定に関する実験を行い、さらに意思決定に関する自己診断を行えるよう、WEB上にサイトを構築する。 [これまでの研究成果] 2000年度から、研究目的に沿った形でいくつかの実験を行った。最も、重要なものは、コンピュータ・ネットワーク上の交渉における信頼形成と交渉行動に関するものである。コンピュータ・ネットワーク上の意思決定では、表面的には純粋な知的共同作業のようにみえても、利害の調整ないし調整が不可欠なものも少なくない。また、純粋な共同作業を行う場合にも、個人情報が不足しがちなコンピュータ・ネットワーク上では、信頼関係をどう醸成するかという問題がつきまとう。 被験者として慶應義塾大学学生を用い、中古自動車の売買を想定したケースを、電子メールを用いて行った。信頼形成に関する仮説モデルを構築し、売買の前後に収集した個人属性を含む詳細なデータと売買に伴う客観的なデータを分析にかけた。 共分散構造分析の結果、一般的信頼の高い人は相手の利益に配慮するため、交渉後の自己満足度が高くなり、相手との信頼も構築できたと感じ、しかも自分の望む価格で取引を行えるということが検証された。一般的信頼が交渉における関心に影響を与え、間接的に交渉結果にまで影響を与えていることを明らかにした点で、意義のある研究であると思われる。 また、コンピュータ・ネットワーク上という、特定の状況での交渉と信頼を結びつけた点も、既存研究にない部分である。コンピュータ・ネットワーク上の共同作業のように、相手の信頼性を評価するための情報が極端に制限されている状態では、相手の情報に基づく信頼感は構築されにくい。そのような場合は、情報に基づく信頼感よりも、むしろ性格特性としての信頼感に基づき相手の信頼性を暫定的に「決めてかかる」と考える方がよい結果をもたらすことを明らかにした。 この研究以外には、自己の倫理ポジションに関する自己診断をWEBサイト上で行い、かつ自動集計するシステムを構築した。予算規模の縮小もあって、現在ではこの倫理ポジションとさまざまな意思決定行動との関係を追究する方向に向かっている。 ■ 研究の発展方向 ネット上でのオークションが活発化しているが、これまでオークションに関しては、ほとんど学術的な研究はされていない。HRCでの研究成果を発展させ、1対1の交渉から1対不特定多数の交渉に研究を発展させたいと思っている。 |