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プロジェクト3

『高精細・高品質映像転送システムの構築』


キー本研究のキーワード
【Digital Video】【MPEG2-TS】【IEEE1394】【資源管理】【広帯域】【Digital Cinema】【VoD (Video-on-Demand)】

インタビュービデオはこちらからご覧いただけます。

■ 研究者

村井 純 環境情報学部 教授
中村 修 環境情報学部 助教授
楠本博之 環境情報学部 助教授
重近範行 環境情報学部 専任講師
南 政樹 環境情報学部 専任講師
杉浦一徳 政策・メディア研究科 研究員



■ 研究内容の概要:

本研究内容は家電親和性の高い高品質映像配信システムの構築とその応用である。
これは,構築が簡易で高画質な映像配信システムの構築と,その利用による高度なコミュニケーションの実現が目的である.

本研究の基盤となるソフトウェアであるDVTS(Digital Video Transport System)は、DV(Digital Video)の動画像配信をインターネットを介して送受信するためのソフトウェアである。DVTSは、安価で入手が容易かつDVを用いることで高画質な動画像配信システムの構築が安価に実現できる。

本年度の研究ではDVTS技術の応用に注力し、不安定なネットワーク環境下で実用的なコミュニケーションを行うための音声の多重化可能なDVTSの開発,様々な場所での利用を実現する可搬性の高い映像配信システムの構築、映像制作の可能性を広げる多地点映像同期・実時間編集システムの構築、今後普及が見込まれる民生用MPEG2-TS機器を用いた映像転送システムの開発,などDVTSを基盤としてより高度なコミュニケーションを可能とする研究が行われた.



■ 研究内容の詳細:

高画質な映像転送をインターネット上で実現する、DVTSを基盤にして、DVTSの発展及び、DVTSを用いたより高度なコミュニケーションに関して研究を行っている。

DVTSの発展に関する研究
  • パケット損失のあるネットワーク下での音の冗長化による実用的DVTSの実現
    特定のリアルタイムコミュニケーション(会議など)は音声情報によりコミュニケーションが支えられていることに注目し、音声の冗長的送信を行うことで、パケット損失のあるネットワーク化においても高い品質の通信が可能となった。DVTSは映像情報に関しては、情報損失時に、送信済みの映像フレームを用いて補填を行うといった対策が行われていたが、音声に関しては対策が行われていなかった。本研究の成果により、音声に関しても情報損失への対策が行われた。
  • 可般型計算機環境での過般性のあるDVTSの実現
    本研究では、現在の高度に洗練された資源を対象にユーザの目的に応じた計算機の資源管理をおこなうシステムアーキテクチャ:RMS(Resource Management Scheme)を構築した.本機構は,「性能」と「消費電力」という視点に基づいた計算機の状態監視をおこない,詳細な制御をユーザやアプリケーションに提供する.本機構を利用したソフトウェア環境として,DVTS(Digital Video Transport System) およびDVoD(Digital Video-on-Demand)を実装し,本機構の有用性を示した.これらのソフトウェアは,プロセッサ資源とネットワーク資源を多く要求するストリーミングアプリケーションである.本機構との組み合わせによって,ジッタやパケット損失などにより性能を低下させることなく効率的な運用が可能となった。
  • 小型メディアによるブータブルDVTSの実現
    本研究では, DVTSを単一フロッピーディスクから起動し, DV データの送信(dvsend) 及びDV データの受信(dvrecv) を可能とする機構を構築した。
    本機構では, DVTS 起動において必要最小限の機能を組み込んだLinux Kernel 及び, 圧縮したファイルシステムを使用し, これらを1 枚のフロッピーディスク上で動作するシステムとして実装した, ルートファイルシステムは起動時にRAMDISK に展開した. また, ファイルシステム内にはDVTS(dvsend, dvrecv) の他にIP アドレスを設定するツールやネットワークの状態を確認するツール等を格納した. 本機構により,既存のハードディスクによる環境構築を行う必要がなくなりDV 送信・受信の実現が可能となった. また,RAMDISK 上にファイルシステムを展開することにより, 従来のUNIX 環境と同等の操作を行う必要なく電源を切ることが可能となった。
  • MPEG2-TS機器への対応
    DVTSはDVを用いることで高品質な映像転送システムを安価に構築可能にしている。今後、DV並に安価で入手が容易な映像機器としてD-VHSなどのMPEG2-TS対応機器が挙げられる。本研究では、民生用の機器を用いたMPEG2-TS転送システムを実現した。MPEG2-TSはDVに比べて、品質変更の柔軟性を持つ。本研究は、目的や帯域に応じた品質変更が容易なDVTS同等の映像転送システムが実現した。

DVTSを応用したコミュニケーションの研究。
  • 実時間編集を可能にする"Remote Shooting System"の実現
    "Remote Shooting System"は遠く離れた多地点での遠隔撮影を実現する。さらに、それらの映像の同期を行うことで、リアルタイムな編集やリアルタイムな視聴(プレビュー)が可能となる。本システムにより、遠隔地にいながら撮影および編集が可能になり、既存の映像製作と比べて、スタッフが同じ空間にいなければならないといった制限がなくなり、映像製作の自由度が上がった。このシステムは実際にデジタルシネマプロジェクトで用いられ、実際に短編映画の映像を撮影する実証実験が行われた。
  • 放送型VoD機構の実現
    現行のTV 相当の映像品質を持つDVを用いた IP マルチキャスト放送型VoD 機構の実現を行った.IP マルチキャストを用いることで,ネットワークの効率的利用と,多数のクライアントへの映像配信サービスを実現できる.これらにより,現存するIP ベースのVoD やTV 放送を上回る放送サービスを実現できる.本機構を実現するためには,送信者と受信者間における入出力非同期の問題,及びDVストリームのバースト性による問題を解決する必要がある.本論では,送信者駆動によるDV ストリームの生成手法に焦点を当て,これらの問題を解決した.本論では,この手法を適用した本機構の設計,実装を行なった.また,送信者と受信者間における同期化とDV ストリームのバースト性に関する評価を行ない,本機構が想定どおり動作することを検証した.さらに,デモンストレーションを行なうことによって,その実現性を示した.



■ プロジェクト3(次世代サイバーアプリケーションの研究)における本研究の位置付け:

サイバースペースにおける具体的なアプリケーションとして、高精細かつ高品質な映像コミュニケーションアプリケーションを提供することで、遠隔地とのコラボレーションをより現実的に実現する。本システムを用いて、遠隔教育、遠隔医療などを実現している。



■ 研究の発展方向

これまでの研究によりDVTSのさまざまな拡張が行われ、またそれを応用したコミュニケーションが実現された。今後の研究は、これらの応用技術の統合が考えられる。たとえばDVとMPEG2-TSの両方に対応したシステムを構築することで、状況に応じた使い分けを行うことが出来る。
また、広帯域環境を想定しているDVTSは今後ますますその利用が増えると考えられる。今後の研究方針として、ユーザインタフェースの改良やセッション管理の自動化といった利用の簡易化や更なる多プラットフォーム化を行うことを視野に入れていく。



■ 関連URL:

DVTSコンソーシアム
http://www.dvts.jp

DV Stream on IEEE1394 Encapsulated into IP
http://www.sfc.wide.ad.jp/DVTS/