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プロジェクト3

『電子政府・e-デモクラシーの取組みに関する公共選択論的考察』


キー本研究のキーワード
【電子政府】【e-デモクラシー】【公共選択】【IT】

インタビュービデオはこちらからご覧いただけます。

■ 研究者

小澤太郎 慶應義塾大学総合政策学部教授
兼大学院政策メディア研究科委員



■ 研究内容の概要:

 情報技術の飛躍的な発展にも関わらず、電子政府の実現はまだその緒にようやく就いたに過ぎないのが現状である。従来、電子政府について非常に多くの研究が為されてきたが、近年、広義の電子政府論とも言うべきe-デモクラシー論が、俄かに脚光を浴びるに至った。しかし、こうしたe-デモクラシー論に根本的に欠けているのは、明晰な概念上の枠組み、説明力の高い理論、及び有効な手法に関する真摯な考察である。こうした問題意識に則り、私自身は「公共選択論」の観点から、電子政府及びe-デモクラシーの問題を検討してきた。ここで公共選択論とは、非市場的意思決定過程に対して経済学的な分析を試みようとする新しい政治経済学を指す。今後もこうした観点からの電子政府研究の可能性をさらに探求したいが、それは私の知る限りこれまで他者により吟味された事のないものである。



■ 研究内容の詳細:

 情報技術の飛躍的な発展にも関わらず、電子政府の実現はまだその緒にようやく就いたに過ぎないのが現状である。従来、電子政府について非常に多くの研究が為されてきたが、近年、広義の電子政府論とも言うべきe-デモクラシー論が、俄かに脚光を浴びるに至った。旧来の狭義の電子政府論が主として、行政の効率化、公的サービスの利便性の向上、そして情報公開といったテーマを扱ってきたのに対して、e-デモクラシー論は住民の行政に対する積極的な関与を検討するまでに至っている。しかし、こうしたe-デモクラシー論に根本的に欠けているのは、明晰な概念上の枠組み、説明力の高い理論、及び有効な手法に関する真摯な考察である。こうした問題意識に則り、私自身は「公共選択論」の観点から、電子政府及びe-デモクラシーの問題を検討してきた。ここで公共選択論とは、非市場的意思決定過程に対して経済学的な分析を試みようとする新しい政治経済学を指す。今後もこうした観点からの電子政府研究の可能性をさらに探求したいが、それは私の知る限りこれまで他者により吟味された事のないものである。
 昨年度の成果については、以下の通りである。
  • 「我が国の電気通信市場と情報通信政策:過去・現在・未来」慶應義塾大学SFCフォーラム事務局編『産学の対話2002:日本復権の構図』慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス、pp.28-37。
  • 「地域通貨の経済学」社会経済生産性本部「平成13年度経済活性化特別委員会 第4回専門部会」(5月9日;新丸コンファレンススクエア)
  • AEI(American Enterprise Institute for Public Policy)セミナー:「日本の電気通信市場における投資と規制に関する諸問題」に日本側討論者として参加(5月27日;帝国ホテル)
  • 「自治体の情報化とIT革命」千葉県自治専門校平成14年度中堅職員研修(7月9日・10月3日;千葉県自治専門校 千葉市)
  • 「e-democracyの取り組みに関して」総務省・地方自治研究機構「構造改革に対応した地方公共団体の役割に関する研究(平成14年度 地方行財政ヴィジョン研究会)第3回委員会」(10月4日;総務省中央合同庁舎2号館)
  • 「経済学、経営学の観点から見た、大和市にふさわしい行政ビジョン 」大和市「第12回大和市自主財源強化研究会」(11月25日;大和市役所)
  • 「電子政府・eデモクラシーに対する公共選択論的視点」日本租税研究協会「財政経済基本問題研究会」(12月13日;銀行倶楽部)
  • 「デフレ対策と地域通貨:最近のインフレターゲットを巡る論争から考える」国際大学グローバルコミュニケーションセンター「第4回ローカル通貨研究会」(2月28日;グロコム)
  • 中村慎助・小澤太郎・グレーヴァ香子編『公共経済学の理論と実際』東洋経済新報社、2003年。



■ プロジェクト3(次世代サイバーアプリケーションの研究)における本研究の位置付け:

 情報技術の発展が政府の統治形態に及ぼす影響を考察するという事から明らかな様に、技術と社会との関わり合いについて検討するのが本研究の使命である。本来技術とは市民の厚生(Welfare)を高める為に活用されるべきものであるが、その技術を使用するのが人間である以上、そうした人間の私的利益の追求者としての側面を等閑視する訳にはいかない。即ち、優れた技術を社会の為に活用する為のスキームづくりの観点から、研究チームへの貢献ができればと考えている。



■ 研究の発展方向

 行政の効率化の観点のみならず住民の意見集約を如何に図るかの問題を念頭に、電子自治体化の取組みに関するインタビュー調査を引き続き行う。当然、直接民主制と間接民主制の役割分担の見直しについての考察も必要となってこよう。さらに最近我が国でも脚光を浴びつつある地域通貨に関する考察も深めていく。特に、地域通貨が経済特区で実験される事の意義を政府に対して訴え掛けていく必要があると同時に、一部でデフレ対策の一翼を担う施策との期待が高まっている事に対しては、冷静にその限界を指摘する必要もあると考えている。また新年度からは、首都機能移転に伴う国会等の移転に関わる行政のあり方の変化についても、電子政府化を踏まえて議論できればと考えている。



■ 関連URL:

小澤太郎研究会
http://www.socc.sfc.keio.ac.jp/ozawa-lab/



■ 関連図版および資料

・「デフレ対策と地域通貨:最近のインフレターゲットを巡る論争から考える」国際大学グローバルコミュニケーションセンター「第4回ローカル通貨研究会」(2月28日;グロコム)
(pptファイル・ダウンロード ZIP(11KB))



■ 【関連資料】

・中村慎助・小澤太郎・グレーヴァ香子編 [2003]『公共経済学の理論と実際』東洋経済新報社.