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プロジェクト3

『e-learningの基礎研究』


キー本研究のキーワード
【e-learning】【遠隔教育】【WBT(web Based Training)】【メタデータ】【ストリーミング配信技術】【インストラクションデザイン】

インタビュービデオはこちらからご覧いただけます。

■ 研究者

斎藤信男 環境情報学部 教授



■ 研究内容の概要:

e-learning は、新しい教育手法、ITを利用した教育手法として急速にその重要性を増しているITの高度な応用の一つである。それは、従来のコンピュータを用いた様々な教育現場での工夫だけでなく、教材のデザイン、講義手法、教育管理の改革、学生の学習効果などの課題が統合的に解決される可能性を持つものである。また、ネットワークの時代の到来と合わせると、従来の教育組織や教育行政を根本的に変革する可能性も秘めている。この研究では、そのような諸課題を明確にし、その相互関係、総合的な解決法、効率的な投資や利用法などを解明していく。



■ 研究内容の詳細:

e-learningの基礎的な課題として、ここでは、以下のものを考える。

(1) 学習効果、教育効果と、適用分野との関連

e-learningは、最大に利用すると教師との直接の交流が無くても従来から定義されている単位と学位を取得する方式が実施出来る。それに対して、教育、学習は人間の基本的な活動であり、教師と生徒の直接の交流なしにはあり得ないと主張する人もいる。その議論に決着をつけるつもりは無いが、少なくともe-learningに向いた学習科目と不向きの科目とがあることは大体想像がつく。これは、コンピュータを利用した教育方式CAI(Computer Aided Instruction)の時代から言えるわけで、何でもかんでもコンピュータを使えとか、e-learningにすべて置き換えてしまえと言うわけではない。

e-learningに適している科目や分野として、内容の固定しているもの、繰り返し学習すると効果的なもの(ドリル方式など)といったものが多い。それに対して、内容が固定しないもの(例えば毎日生ずる事件や出来事が基盤になっている科目)、概念的な理解が重要なもの、といった分野は、あまり適していないということが出来るだろう。

上記のことを考慮すると、比較的向いているのは理系的科目であり、あまり適していないのは文系的科目ということも言える。ただし、理系科目でも、概念理解が重要なものが多くあり、また文系科目でも内容が固定し繰り返し学習しなければならないものも多数ある。

(2) 教材デザインの効果と限界

e-learningは、教材全体をあらかじめ用意しシステムとして組み上げることを事前に行うので、講義全体の筋書き、進め方、補助活動(演習や宿題など)、評価方法などが一括して事前に見やすくなっている。従来でも、シラバスを事前に配布するような方式をとっていることも多かったが、e-learningが導入されると事前の教材構築が必須となる。そこで、全体の組み立てなどを効果的に行う専門分野としてインストラクションデザイン(Instruction Design) といった専門分野がクローズアップされてきた。これは、従来の教育学部あるいはその上の専門大学院で教えている。我が国ではまだ少ないが、米国ではかなり流行している。

一つの科目は、題名がつきそのカバーすべき範囲もおおよそ決められている。大学では、そのような科目の集合体が一つの学部や学科の目標とすべき人材教育を支えているのである。そのためには、勿論その内容が先ず重要であり、その講義の仕方、材料の並べ方、補助活動などはその次に来るべき問題と見るのが妥当であろう。良い内容が設定できれば、良いインストラクションデザインによりより効果的な教材作成が可能となり、より効果的な講義が実施できる分けである。

(3) e-learning支援システムの基本的なアーキテクチャ

e-learningを実際に遂行するためには、それを支援するe-learning環境が必要になる。それは、単に学生に教材を提示するシステムだけでなく、様々な機能を持った統合的な環境を目指さねばならない。そこで、そのような基本的機能をどのように連携させ、全体としてe-learningをスムーズに支援していくのかを考慮したシステムアーキテクチャを設計しなければならない。そこでは、少なくとも教材を提示するクライアントインタフェース、学生の学習を管理し大学の制度と整合を訪っていく学習管理(Learning Management System)、教員などによる教材の作成を支援していく教材作成支援システムは、必須の要素である。その他に、全体の効率を上げていくための補助的サーバ(ストリーミングサーバなど)、教材管理システム、レポート提出や質疑応答支援システムなどの補助活動を管理するシステムなども、統合化され相互にスムーズに連携出来れば、大いに有効な支援環境になっていく。

(4) 国際標準の動向とその評価

既に欧米では、国際レベルのe-learning 関連規格の制定が進められている。我が国でも、いくつかの団体が結成され、それらの標準団体とも交流が行われている。我が国では、使用言語の問題もあり国際標準との整合性が問題になることもあるが、今後国際的な展開を考えると、現在進められている欧米の標準規格を充分研究し、その評価を行った上で、なるべく整合性の取れる方向でアーキテクチャなどを設計する必要があろう。



■ プロジェクト3(次世代サイバーアプリケーションの研究)における本研究の位置付け:

サイバーアプリケーションのグループでは、様々な先進的な分野を考えているが、その一つとして教育分野での重要なアプリケーションの例として位置付けられる。



■ 研究の発展方向

既に、e-learning は実用化の時期になっているので、具体的な適用も視野にいれて早急に基礎的な課題に取り組み、その結果を具体例に持ち込んで行きたい。



■ 関連URL:

研究室
http://www.slab.sfc.keio.ac.jp